肛門外科
肛門外科
肛門外科は、肛門疾患全般を取り扱う診療科です。日本人の3人に1人が痔で悩んでいるといわれるほど、私たちにとって、おしりの病気は身近なものです。その病態は様々で三大肛門疾患といわれる痔核(いぼ痔)、裂肛(切れ痔)、肛門周囲膿瘍・痔ろう(あな痔)が有名ですが、痔と紛らわしい数多くの疾患が存在します。大腸肛門病学会指導医が適切に診断、治療を行っています。おしりを見せることや病気そのものに対する不安感などから「肛門科」の受診をためらう方も多く、当院は少しでも気軽に受診いただけるようさまざまな取り組みを行っております。
1 日帰り外科治療を実施
注射治療のみの日帰り手術ではなく、脊椎麻酔下での日帰り外科手術をおこなっています。
2 キッズスペースを完備
診察や手術の間、お子さんはスタッフで見守りさせていただきます
小さなお子様のおられる方もお子さんをお連れして受診してください
3 女性に配慮した診察
女性患者さんの診察時には必ず女性スタッフが介助します
4 エキスパートによる診療
各種学会指導医である院長が診療を行っています
・日本大腸肛門病学会指導医
(認定番号T01258)
・日本消化器外科学会指導医
(認定番号7560)
・日本外科学会指導医
(認定番号S013714)
5 おしり以外も総合的に診療
当院は内科や整形外科まで含め総合的に診療しており、おしりの相談以外にも安心して受診いただけます。また、おしりの病気と気づかれることなく受診が可能です
痔は肛門疾患の総称のことで、日本人の3人に1人は痔で悩んでいると言われます。
痔はいぼ痔(痔核)、きれ痔(裂肛)、あな痔(痔瘻、肛門周囲膿瘍)の3つに分類されます。以下に特徴をまとめました。
原因 | 肛門のうっ血 (いきみ、長時間の座位) |
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内痔核の症状 | 出血(便器が赤くなることも) ※痛みはないこともある |
外痔核の症状 | 肛門縁に「豆」のようないぼ 痛みもある 出血は少ない |
治療 | 軟膏、内服治療をまず行う 改善ないときは注射や手術 |
原因 | 主に便秘(硬い便)が原因 繰り返すと肛門ポリープや皮垂ができる |
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症状 | 排便時のピリっとした痛み 排便後も痛みが続くことも 出血は紙につく程度が多い |
治療 | 軟膏治療、便秘薬の投与 便秘薬は定期内服が必要 手術になることは比較的少ない |
原因 | 繰り返す下痢などで肛門と直腸の境界からばい菌が肛門外へ侵入 膿の塊をつくる(肛門周囲膿瘍) 膿瘍が改善しても約半数で膿のトンネルが残る(痔瘻) 痔瘻があると肛門周囲膿瘍を繰り返す |
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症状 | 痛みや発熱(肛門周囲膿瘍) 肛門の近くにおでき様のものができる(痔瘻) |
治療 | 手術が必要 |
ヒトパピローマウィルス(HPV)が原因の感染症で、外陰部や肛門にいぼができます。米粒大の先の尖ったものや平らなものなど、様々な形のいぼが多数でき、徐々に増えていきます。大きくなるとカリフラワーのようになることもあります。こすれて出血を生じることもありますが、痛みを伴うことはほとんどありません。肛門以外に陰茎や腟といった性器に生じることもあります。性感染症とされていますが、公衆浴場(特にサウナのバスタオルなど)、洗浄便座の使用による感染も否定できません。治療には外科的切除や薬物療法がありますが、当院では高周波メスを用いた外科的切除(焼灼)を主に行っております。
肛門ではなく、肛門周囲の皮膚が荒れた状態です。肛門のかゆみや痛みを生じます。便失禁(少量でも)や排便後の拭きすぎ、洗浄便座の使い過ぎなどで発症します。皮膚炎ですので、「痔」で用いられる軟膏を塗っても改善は見込めません。ステロイド軟膏が有効ですが、皮膚炎の原因を取り除くことも必要になります。
HSV(単純ヘルペスウイルス)による感染症で、肛門周囲や直腸内に潰瘍性病変を生じます。肛門周囲の病変は痛みを伴うことが特徴です。診断は潰瘍性病変から浸出液を採取し、抗原検査を行います。結果は10分から15分ほどで出ます。治療は抗ウイルス薬の内服を行います。頻度は少ないですが、サイトメガロウイルスにより類似した病変が発生することもあり注意が必要です
クローン病や潰瘍性大腸炎といった自己免疫疾患、淋菌、梅毒、クラミジアといった性感染症、サルモネラなど食中毒を起こす菌などが原因で発症します。発熱や頻回の下痢など、「痔」とは異なる経過をたどります。重症化することもあり、早めの対応が必要です。
排便時に下部直腸粘膜の一部が肛門外へ脱出する病気です。出産や長年の便秘による強いきばりなどが原因となります。後述する直腸脱が直腸全周が肛門から脱出した状態を指すのに対し、直腸粘膜脱は一部のみが脱出するため、「不完全直腸脱」とも呼ばれます。治療は痔核に準じた術式を行います。
直腸を支える骨盤底の筋力低下により、肛門括約筋が緩み、大きく開いて直腸が肛門から脱出する状態をいいます。お産経験の多い高齢女性に多くみられ、子宮脱や膀胱脱を伴うこともあります。肛門から直腸全体が脱出し、こぶしくらいの大きさになることもあります。はじめは排便時のみの脱出ですが、進行してくると立ったり、歩いていたりするときでも直腸が脱出してきます。
脱出が頻繁になると腫れや痛みのほか、下着に直腸粘膜がこすれて粘膜が脱落したり、出血をきたしたりすることもあります。治療は外科的手術が原則で、手術方法には経肛門的手術と、経腹的手術(腹腔鏡下直腸固定術)があります。
大腸がんの患者さんは増加傾向であり、男性では前立腺がんについで第2位罹患数であり、女性では乳がんについで第2位の罹患数となっています。大腸がんでは下血や便が細くなるなどの症状が出現しますが、症状が出た時点では進行していることも多く、検便などの大腸がん検診、人間ドッグでの大腸カメラなどが早期発見に有用です。院長は長年、大腸がん診療に従事してきましたが、「痔と思ってほったらかしていたら大腸がんだった」という患者さんを少なからずみてきました。「本当に痔なのか」、「大腸がんの精密検査は必要なのか」を適切に判断致しますので、ぜひご相談ください。
消化管を動かす筋肉の弱い部分から粘膜(と漿膜)が飛び出して袋状になるものを憩室と言いますが、結腸憩室は頻度の高い疾患です。憩室に炎症を起こすと憩室炎といって腹痛の原因になりますし、憩室から出血すると下血が生じます。憩室からの出血では、「痔」からの出血とは違い、正常な便がほとんど見られず大量の下血をすることが特徴で、ほとんどは入院加療が必要となります。
結腸を栄養する動脈(結腸動脈)の虚血により、腸の粘膜が壊死し、腹痛や下血を生じます。高血圧や糖尿病、脂質異常症を持つ患者さんに多く発生し、結腸動脈の硬化が原因です。便秘や下痢などにより腸内圧が亢進することも発症のきっかけとなります。症状は数日で改善することが多いですが、点滴治療が必要になるため、原則として入院が必要です。