創傷
創傷
創傷とはいわゆる「ケガ」のことで、程度の差はありますが、誰しもが経験するのではないでしょうか。創傷は、一般的に軽度のものであれば自然に治癒します。重度の創傷であっても、適切な手術などを行うと自然治癒力により治癒していきます。しかし、なんらかの原因により、治療していても数ヶ月以上治癒しない創傷があります。これを難治性創傷(慢性創傷)と呼びます。主な原因としては、糖尿病、末梢動脈疾患(動脈性)、末梢静脈疾患(静脈性)、圧による褥瘡などが挙げられます。これらの病気に罹患していると難治性(慢性)創傷になりやすいといわれています。
・擦過傷(さっかしょう) 転んで擦りむいた傷
・切創(せっそう) 包丁やガラス片などで指を切った
・動物咬傷(こうしょう) 犬や猫にかまれた
・刺創(しそう) とげが刺さった
・挫滅創(ざめつそう) 強い衝撃で皮膚や筋肉がつぶれた状態
運動や軽い転倒などで起こりやすいすり傷です。日常的に誰もが経験する切り傷ですが、土や砂、サビなどが傷口に入ってしまい、治った後まで色素沈着が残っている状態を外傷性刺青といいます。すり傷は、まず傷口の砂や泥などを水道水で洗い流し、きれいにすることが重要です。一方、傷口が大きかったり、深かったりするとき、汚いところで受傷した場合は受診して下さい。
治療は、まず傷口を洗い、砂やアスファルト、小石やガラス片などが埋まり込んでいないかを確認します。これらは膿みや黒茶色の傷あとの原因になるので確実に取り除きます。創汚染がひどい場合は、破傷風トキソイドの注射が必要な場合があります
鋭利なものに皮膚が接触すると切り傷が生じることがあります。浅い表皮だけの切り傷であれば、出血があっても、通常、しばらく圧迫することで血が止まり、縫合の必要はありません。しかし屋外でのけがや汚れたものでの切り傷は、感染する可能性がありますので、水道水でよく洗浄後、抗生剤内服や破傷風予防が必要です。また、深い切創では、縫合処置が必要な場合があります
動物にかまれた傷の場合は感染のリスクが高く、洗浄処置に加えて抗生剤内服が必要です。さらに破傷風予防が必要になります。
鋭いものが刺さって生じる傷で、傷口は小さく、深いことが特徴です。ナイフや包丁、釘、針、アイスピック、鉛筆、竹などによる刺し傷が多くみられます。浅い刺し傷は問題が出ることは少ないですが、深い刺し傷では部位によって対応が大きく異なります。手や足の刺し傷で、腱(すじ)や筋肉が切れると、手・足・手の指・足の指の動きが悪くなることがあります。神経が切れれば、先端の知覚が鈍くなったり、動きが悪くなったりします。太い血管が切れてしまうと大出血を起こします。肺に傷が達すると呼吸困難となり、腹部は内臓に達すると腹膜炎や腹腔内出血を起こし、緊急手術が必要となります。浅い刺し傷は刺さったものを抜き、傷口を水道水で洗うだけで問題ありませんが、深い刺し傷は、刺さったものを抜かずに速やかに受診してください。
創傷では、感染予防のためまずは流水で洗い流すことが重要です。流水で洗い流せば消毒は不要です。消毒は以前は行われておりましたが、創部の治癒を逆に遅らせることがわかっています。流血が見られる場合は、出血部を直接圧迫してください。出血の程度がひどい場合は5分から10分程度圧迫が必要なこともあります。このような場合は、圧迫しつつ病院を受診することをおすすめします。
創部を絆創膏などで保護したままシャワーや入浴をするのではなく、毎日しっかり洗浄することが必要です。石鹸は刺激になるので、流水で洗うだけで十分です
創部は乾燥させないように、絆創膏などで保護しましょう
傷は乾燥させずに、適度な湿度を保つことが創傷治癒に良いとされています。この原理を利用したのが、キズパワーパッドになります。粘着力も強く、防水作用もあり便利な製品です。しかし、湿潤療法では、感染に注意が必要です。感染があるのに、湿潤療法を行うと感染を悪化させてしまう恐れがあります。感染しているかどうかは判断が難しく、キズパワーパッドでのセルフケアは意外と難しいため、自身のない方は病院での受診をお勧めします。
以上のような創傷は、感染するリスクが高いことから十分な洗浄、抗生物質の内服、汚染がひどい場合は破傷風の予防が必要ですので病院を受診してください
このような場合も、縫合処置や異物除去が必要ですので、病院受診をおすすめします
破傷風は傷口より破傷風菌という細菌が侵入して感染します。野良犬や野良猫にかまれることにより感染することが多いとされています。
破傷風菌の産生する毒素が神経に影響し、口が開きにくい、体が弓ぞりになる、重症化すると呼吸ができなくなって死亡する場合もあります。破傷風菌の感染を防ぐには、受傷早期に破傷風トキソイドや破傷風抗体を注射することで感染を予防することができます。通常は幼児期に予防接種(DPT-IPV)を行うことで感染予防効果を認めますが、免疫力は一生続くものではなく、ワクチン接種から5年以上経過し傷が汚い場合や傷がきれいでもワクチン接種から10年以上経過している場合は、破傷風トキソイドの注射が必要になります。また1968年以前に生まれた人は定期接種の対象でなかったため、注射が必要になる場合が多いと思われます。