糖尿病
糖尿病
糖尿病とは、血液中のブドウ糖濃度(血糖値)が慢性的に高い状態が続く病気です。ブドウ糖は体を動かすエネルギー源ですが、高血糖状態が続くと血管にダメージを与え、全身の血管に障害を引き起こします。その結果、さまざまな合併症が発生します。
糖尿病の治療目標は単に血糖値を下げることではなく、高血糖がもたらす合併症を予防することにあります。わが国では、糖尿病が強く疑われる人は約1,000万人、可能性が否定できない人を含めると約2,000万人(成人の約4人に1人)いるとされ、患者数は年々増加しています。
糖尿病は「1型糖尿病」と「2型糖尿病」の2つに大きく分けられます。
主に自己免疫疾患が原因で、膵臓のβ細胞(インスリンを分泌する細胞)が破壊されることにより発症します。インスリンがほとんど分泌されなくなるため、外部からのインスリン補充が不可欠です。
膵β細胞からの「インスリン分泌低下」や、肝臓・筋肉・脂肪組織でのブドウ糖取り込みが低下する「インスリン抵抗性」が組み合わさって発症します。この背景には、複数の遺伝要因とともに、高脂肪食、運動不足、肥満、ストレス、加齢などの環境要因が影響しています。特に日本人は、「インスリン分泌低下」が優位であることが特徴です。
糖尿病の診断には、直近1~2か月の平均血糖値を示す「HbA1c」と採血時点の血糖値が用いられます。
※HbA1cとは
ヘモグロビン(赤血球中の酸素を運ぶ成分)にブドウ糖が結合している割合を指標とした数値です。赤血球の寿命が約3か月であるため、過去数か月の血糖値の状態を反映します。
診断基準は以下の通りです:
これらの条件のうち、①②のどちらかと③が同時、または①②③のいずれかが2回確認されると糖尿病と診断されます。
糖尿病では、尿に糖分が排出されることで以下のような症状が現れることがあります:
これらの症状が出る背景には、体が尿に糖分を排泄することで血糖を下げようとする仕組みがあります。しかし、糖尿病で問題となるのは、これらの初期症状よりも血管障害です。
糖尿病神経障害(しびれや痛み)、糖尿病網膜症(視力低下や失明)、糖尿病腎症(腎機能障害や人工透析の必要)が発生します。
動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳卒中、手足の壊死(壊疽)を引き起こします。
血管障害は一度起こると元に戻すことができません。多くの場合、血管障害が進行してから症状が現れるため、早期の対応が重要です。また、高血糖だけでなく、脂質異常症や高血圧も血管障害のリスクを高めるため、これらを含めた総合的な治療が必要です。
食事療法や運動療法で血糖コントロールが十分でない場合、薬物治療が行われます。