
骨粗鬆症(こつそしょうしょう)
骨粗鬆症(こつそしょうしょう)
高齢化社会の進行に伴い、骨粗鬆症の患者さんは増加しています。
骨粗鬆症とは、骨がもろくなり、骨折リスクが高まった状態を指します。運動不足や生活習慣病、女性ホルモンの減少など、さまざまな要因が関与して発症します。
特に椎体骨折や大腿骨骨折を起こすと、QOL(Quality of Life:生活の質)が著しく低下するため、骨粗鬆症を早期に発見し、骨折を予防することが重要です。
骨粗鬆症そのものには自覚症状がありません。
しかし、次のような症状がみられる場合は、骨粗鬆症による椎体骨折(背骨の骨折)を疑います。
レントゲン撮影により骨密度を測定します。
主に大腿骨や腰椎の骨密度を直接測定するDXA法があり、最も正確です。ただし、DXA法には大型の装置が必要なため、手指の骨密度を測定して代用するRA法が使われることもあります。RA法は大腿骨や椎骨と異なる骨密度の値を示す場合があるため、注意が必要です。
※当院ではDXA法は行っておりません。
骨の材料となる血中のカルシウムやリン濃度、吸収を促進する活性型ビタミンD濃度、さらに骨形成マーカー(PINP)や骨吸収マーカー(TRACP-5b)などを測定し、骨粗鬆症の診断や治療効果の判定に役立てます。
FRAX®は、世界保健機関(WHO)の国際共同研究グループが開発したプログラムです。
40歳以上75歳未満を対象に、危険因子を入力することで、今後10年間に骨粗鬆症による骨折が起こる確率を計算できます。インターネット上で公開されているため、ご自身でもチェック可能です。結果については、医師にご相談ください。
適度な運動により、骨形成(骨を作る働き)が促進されます。
また、日光に当たることで腸管からのカルシウム吸収を促進するビタミンDが活性化されるため、屋外での運動がおすすめです。
※夏場は熱中症に注意しましょう。
カルシウムやビタミンDを十分に含む食事を心がけ、骨の健康を保ちます。
骨は「骨吸収(古い骨を壊す)」と「骨形成(新しい骨を作る)」のバランスによって維持されています。骨粗鬆症ではこのバランスが崩れ、骨吸収>骨形成となるため、治療薬には「骨吸収抑制薬」と「骨形成促進薬」が用いられます。
骨吸収抑制薬の代表です。近年では月1回の内服で済む製剤もあります。
効果は約5年で頭打ちになるとされるため、長期使用時は注意が必要です。
長期使用でも効果が減弱しにくく、半年に1回の注射で済む点がメリットです。
ただし、中止すると骨密度が急激に低下し骨折リスクが上がるため、継続的な通院管理が必要です。
スクレロスチンという物質の働きを抑制し、骨形成を促進します。
通常、1か月に1回皮下注射を1年間行います。骨折リスクの高い患者さんに使用されます。
骨代謝は副甲状腺ホルモン(PTH)により調整されていますが、PTH作用をもった製剤がテリパラチドになります。通常はPTHを投与すると骨吸収が進むのですが、断続的にテリパラチドを投与することで、骨芽細胞が活性化し、逆に骨形成が促進されるというユニークなお薬です。テリボンの場合、1-2週間に1回皮下注射を2年間行います
通常ビタミンDは体内で不活性な形で存在しまが、肝臓で25-ヒドロキシビタミンDに、次に腎臓で1,25-ジヒドロキシビタミンDに変換されて活性化されます。活性型ビタミンDは腎臓での活性化をうけることなく、ビタミンD受容体にはたらき作用します。ビタミンD受容体が作動すると、腸管からのカルシウム、リンの吸収、骨吸収抑制作用がはたらき、骨量の増加をもたらします。
※カルシウム製剤を内服すると急激に血中カルシウム製剤濃度が上昇し心筋梗塞などのリスクがあるとされることからあまり用いられず、活性型ビタミンD投与を介して、カルシウムの取り込みを促します。したがって、カルシウムを多く含んだ食事をとることも重要となります
女性ホルモン低下が骨粗鬆症のリスク要因となるため、SERMで補うことにより骨折リスクを低下させます。
ただし、長期投与により女性特有のがん(乳がん、子宮体がんなど)のリスクが上昇するため、使用には注意が必要です。