裂肛・切れ痔|いまがわ外科クリニック|大阪市都島区の内科・外科・整形外科・肛門科・形成外科・美容診療・消化器内科

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切れ痔(裂肛)

裂肛・切れ痔|いまがわ外科クリニック|大阪市都島区の内科・外科・整形外科・肛門科・形成外科・美容診療・消化器内科

裂肛とは

裂肛は、「きれ痔」とも呼ばれ、肛門の出口付近の皮膚(歯状線の下にある肛門上皮)が切れた状態のことを指します。肛門上皮(皮の部分)に傷がつくことは決してまれなことではなく、多くの方が経験されることです。しかし、排便習慣の異常が持続して、慢性的に肛門上皮への障害が繰り返されると、なかなか傷が完治しません。このような状態になると、潰瘍形成を伴うようになったり肛門の出口が狭くなったり、肛門ポリープを合併する切れ痔へと発展します。20〜40歳代の女性に好発します。

 

 

 

 

裂肛の原因

便秘による硬い便の通過や、頻回の下痢便などで、肛門出口付近の肛門上皮が裂けたり、直腸肛門部の血液循環が悪くなることが原因です。歯状線より下にある肛門上皮は、肛門内側の粘膜と違い、知覚神経(痛みを感じる神経)が通っているため、強い痛みが伴います。

裂肛の種類と症状

裂肛は、急性裂肛と慢性裂肛に分類されます。
裂肛になると排便時に痛むため、トイレを我慢してますます便が硬くなり、傷が悪化して慢性化することがあります。慢性化すると肛門が狭くなってしまうので、ますます便が通りにくくなり、傷がひどくなるといった悪循環をくりかえすことになります。

(1)急性期

排便時にトイレットペーパーにつく程度の出血とピリっとした痛みがみられ、
排便後にもズキズキとする痛みが続きます。程度が強い場合は、多量に出血したり、数週間痛みが続くようなこともあります

(2)慢性期

長期間にわたる裂肛のため、深い傷になって潰瘍状になり、皮膚の突起物(見張りイボ)や肛門ポリープができたり、肛門狭窄(こうもんきょうさく)が起きることがあります。慢性裂肛になると肛門狭窄を解除するような外科的治療が必要になります。

裂肛の検査・診断

裂肛は、詳細な問診や局所の視診、触診などを基本として診断されます。
合併症として、肛門潰瘍、肛門ポリープなどが起こることもあるため、こうした合併症の有無を調べることもあります。さらに、出血が起こる疾患として肛門がん、大腸がん、大腸ポリープなどの疾患も存在するため、症状や年齢などに応じて内視鏡検査(大腸カメラ)や注腸検査なども行うことが検討されます。

裂肛の保存的治療

  • 便秘に対する治療(メイン)
  • 裂肛に対する薬物療法
  • 排便姿勢の指導

急性裂肛で手術に至ることは多くなく、便秘が主な原因であることが多いため、継続的な便秘治療が必要です。当院では消化器病指導医・専門医が専門的な便秘治療を行います。裂肛に対しては軟膏や内服などの薬物療法を行います。

便秘に対する治療

裂肛に対する薬物療法

裂肛に対しては主に軟膏治療を用います。痔核で用いられる軟膏とほぼ同じですが、ネリザ軟膏については裂肛に対しての適応がありません。痛みが強いときには軟膏だけでなく、Nsaids(ロキソニン)などの投与を行いますが、長期投与をすると胃潰瘍などのリスクがあり注意が必要です

裂肛で用いられる軟膏薬の比較表

ステロイド 麻酔成分 適応疾患 特徴 1gあたりの成分量
プロクトセディル軟膏 ++ 痔核 裂肛 皮膚炎 抗生剤と血流改善成分も含有 ヒドロコルチゾン5.0mg ジブカイン5mg
ヘモレックス軟膏
強力ポステリザン軟膏 なし 痔核 裂肛 皮膚炎 大腸菌死菌液が免疫誘導して作用 麻酔成分が含まれない ヒドロコルチゾン2.5mg
ヘモポリゾン軟膏
ボラザ軟膏 なし 痔核 裂肛 ステロイドが含有されていない リドカイン20mg トリベノシド100mg
市販薬
リシーナ軟膏 ++ 痔核 裂肛 皮膚炎 ステロイド含有量が多い 内痔核には使いにくい 酢酸ヒドロコルチゾンエステル5.0mg リドカイン24mg アラントイン5mg

プリザエース注入軟膏

++ 痔核 裂肛 皮膚炎 止血成分も含有 酢酸ヒドロコルチゾンエステル2.5mg リドカイン30mg アラントイン5mg

ボラギノールA注入軟膏

++ 痔核 裂肛 皮膚炎 アラントインは組織修復成分 プレドニゾロン酢酸エステル0.5mg リドカイン30mg アラントイン10mg

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軟膏には以下の成分が主に含まれています

  • ●抗炎症成分(ステロイドやステロイド以外のもの):痔の炎症を抑える 
  • ●麻酔成分:痛みやかゆみをおさえる
  • ●痔の原因となる血流障害を改善する成分や止血成分 

市販薬と処方薬の違い

市販薬ではステロイド、麻酔成分に加えて、化粧品などにも含有される組織修復成分でるアラントイン、血行改善作用のあるビタミンEを含んだものが販売されています。いぼ痔・切れ痔・肛門周囲皮膚炎にバランスよく使用できるのが特徴です(使用前には添付文書をお読みください)。処方薬では、痔の状態に応じて、きめ細かに軟膏を使い分けることが可能です。

軟膏薬

 プロクトセディル軟膏・ヘモレックス軟膏

炎症成分と麻酔成分に加えて、抗生剤や血流障害成分を含有しているのが特徴です。ステロイド含有量も中等度であり、疼痛や炎症の強いときに使用します。

 強力ポステリザン軟膏・ヘモポリゾン軟膏

弱ステロイドを少量含んでいますが、比較的長期投与が可能です。主成分に含まれる大腸菌死菌液が、インフルエンザワクチンなどと同様に免疫細胞を局所に誘導することで、抗炎症作用を発揮するとされています。痛みどめがふくまれていないので、切れ痔ではあまり用いておりません。 

ボラザG軟膏

痔に対する抗炎症・鎮痛作用のあるトリベノシドが主成分となります。トリベノシドには内服薬(ヘモクロンカプセル)もあります。強力ポステリザン軟膏に比べると効果はマイルドです。長期投与も可能ですが、あまりおすすめは致しません。

内服薬

軟膏薬で治療効果が乏しい場合や、痛みなどの症状が強い場合は内服薬を併用します 

ヘモナーゼ配合錠

ブロメライン(組織修復成分)、トコフェロール酢酸エステル(ビタミンE)を含んだ内服薬になります。当院では軟膏と併用しています。痔核・裂肛に適応があります

 

適切な排便姿勢

直腸肛門角について 静止時と排便時の違い

直腸と肛門の間は普段は折れ曲がって、角度がつくことで便がもれないようになっていますが(直腸肛門角といいます)、 排便時には直腸と肛門がまっすぐになり便が排出されます。直腸肛門角をまっすぐにさせるには前かがみの姿勢が理想的で、和式便所での姿勢が理想的です。最近は和式便所が減ってしまいましたが、洋式便所でも足元に小さな台をおき、そこに両足をのせて排便することで、前かがみの姿勢を作ることも可能です。インターネット通販等で「トイレスムース」といった専用の商品が販売されておりますし、100円均一で販売されている折り畳み式の足台を2個(両足分)を使用しても代替できます。

 

洋式トイレに足台を設置 理想の排便姿勢となったところ

裂肛の外科治療(手術)

急性裂肛の多くは保存的治療で改善しますが、慢性裂肛では肛門ポリープやみはりいぼなどが生じ、肛門狭窄をきたします。肛門狭窄をきたした場合には外科治療(手術)が行われます。手術は肛門形成術といわれる、肛門狭窄を解除する術式が行われ、以下のようなものがあります

 

側方内肛門括約筋切開術(LSIS)

炎症で硬く狭くなった内括約筋の一部を切開し、肛門の狭窄を解除する方法です。lateral subctaneous internal sphincterotomy(LSIS)と呼びます。内括約筋を露出して切開を加えるopen法と、露出せずに直接メスをいれて切開するblind法の2通りがあります。当院では安全で確実なopen法で行っています。内括約筋を露出するといっても、約1cmの切開ですので傷跡はほとんど目立ちません。局所麻酔での手術も可能です

 

皮膚弁移動術(SSG)

Sliding Skin Graft(SSG)と呼ばれる術式です。LSISで対応できないような重症の狭窄に行います。括約筋の切開だけではなく、硬く潰瘍化した肛門上皮を切除し、皮膚弁を肛門上皮の代わりとして縫合を行います。脊椎麻酔下で肛門括約筋を十分に弛緩させた状態での手術が必要となります。