虚血性腸炎
虚血性腸炎
大腸は、上腸間膜動脈から右側結腸(上行結腸・横行結腸)、下腸間膜動脈から左側結腸(下行結腸・S状結腸)、直腸動脈から直腸へ、それぞれ血液の供給を受けています。
何らかの原因で一時的に血流が低下すると、大腸の粘膜が障害され、炎症や潰瘍、出血が起こります。これが虚血性腸炎です。
発症しやすい部位は、上腸間膜動脈と下腸間膜動脈の境界部である結腸脾彎曲部や、下腸間膜動脈と直腸動脈の境界部である直腸S状部です。これらは血流が比較的乏しいため、虚血が起こりやすい部位とされています。
多くは軽症で自然に改善しますが、まれに腸が壊死したり穿孔を起こしたりする重症例もあるため、早期診断・早期治療が重要です。
虚血性腸炎は、①血流の低下と②腸管内圧の上昇が重なって発症すると考えられています。
血流低下の原因としては、
などがあります。
また、腸管内圧が上昇する原因としては、
などが挙げられます。
便秘傾向のある中高年女性に多くみられますが、若い方でも脱水や激しい運動などをきっかけに発症することがあります。
食後にランニングやマラソンをして腹痛を経験したことがある方もいらっしゃるかもしれません。これは、食後は消化・吸収のために腸への血流が増加する一方、運動中は筋肉への血流が優先されるため、相対的に腸への血流が低下することが原因と考えられています。通常は一時的な腹痛で済みますが、脱水などの条件が重なると虚血性腸炎を発症することがあります。
典型的には、腹痛が先に起こり、その数時間後に血便が出現するという経過をたどります。血便は鮮血の場合が多いです。腹痛は一過性のことが多いですが、強い腹痛が持続する、高熱がある、血圧が低いなどの場合は重症化している可能性があるため、救急病院への受診が必要です。
症状や診察所見に加え、必要に応じて次の検査を行います。
血液検査では炎症の程度などを評価し、CT検査では腸管壁の腫れや炎症の範囲を確認します。
さらに、大腸カメラでは粘膜の障害を直接観察でき、診断の確定だけでなく、
など、血便をきたす他の病気との鑑別にも非常に重要です。
大腸カメラは発症早期に行う場合もあれば、症状が落ち着いてから行う場合もあります。当院では、鎮静剤を使用した「しんどくない大腸カメラ」を行っております。以前検査がつらかった方や初めての方も、安心してご相談ください。
多くの虚血性腸炎は手術を必要とせず、保存的治療で改善します。
主な治療は、
です。
症状が軽い場合は外来治療が可能ですが、脱水が強い場合や食事が摂れない場合には入院加療が必要になることもあります。また、腸が壊死した場合や穿孔を起こした場合には、緊急手術が必要となることがあります。
血便があると、「痔だろう」と自己判断して受診を遅らせてしまう方もいらっしゃいます。
しかし、血便の原因には、
など、さまざまな大腸の病気があります。
もちろん、痔(いぼ痔・切れ痔)が原因であることもありますが、自己判断は禁物です。血便を認めた場合は、原因を正確に調べることが大切です。